日本人と台湾人のものづくり 〜生き残るために「こだわり」を「情熱」に変える!〜


「こだわり」
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「こだわり」より転送
執着(しゅうじゃく、abhiniveza अभिनिवेश (sanskrit))とは、仏教において、事物に固執し、
囚われる事。主に悪い意味で用いられ、修行の障害になる心の働きと考えられている。
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先日、勝手に師匠だと思っている人から台湾の協業会社に視察に行った時の体験話を聞く機会があった。こんなことを言っていた。

日本人は与えられたものづくりに「こだわり」を持つ。
しかしある意味、台湾のものづくりには「こだわり」がない。

という。

話を聞いた中で、自分なりに思考し解釈した内容を書く。

日本人と台湾人を比較してみる
日本人
日本人は設計図面の許容値を満たすように取り組むのではなく、「許容値が10なら目指すのは5以下が当たり前」とばかりに、与えられた許容値よりも勝手に目標を上げて取り組む。
これには、
○不安からの次工程へのマージン。
(→何かあったら面倒だから事前に予防措置をしておこう)
○より良いものをオレは作れるんだ!という自己満足。
○日本ユーザーの品質への厳しい目
(→なぜ許容値10で10のまま出荷するんだ!なぜ数値を向上させる努力をしないんだ!)
というこれまで育ち育てられてきた「日本人気質」ならではの力が大きく働いていると考える。

台湾人
台湾のものづくり力は日本の高度成長時代に下請けで培われた(らしい)。
しかし今や世界のIT産業のものづくりを支えているといっても過言ではないと思う。
ものづくりの考え方はというと、「許容値が10なら12,3くらいでいいだろう」という考え方だそうだ。
予防措置の考え方も全く違う。台湾の回線業者の話で
「アラームが上がって来てもユーザーの申告がなければ直しにいかない。クレームがあればすぐ直すが、そうでない場合は別の都合でアラームが出ている可能性がある」という考え方だそう。(日本の業者ならアラームが出れば予防保全的に何でも直す)
また台湾は中小規模の企業が多く、自分で事業を立ち上げる意欲、いわゆる起業家精神が旺盛だ。組織で動くより合理主義に基づいて個人で動く傾向があるそうだ。

今ある情報から両者について、日本人の私としては第一印象として「やっぱり日本だな。台湾人は怠け者だ。」と感じてしまう。


先入観を捨ててみる
しかしどうだろう?本当にそうなのか?
大きな視点で見ると、世界は日本の「こだわり」のものづくりではなく、台湾や中国など低コストのものづくりを求めている。
日本人として刷り込まれた先入観を捨て、もう一度両者を比較して考えてみる。

日本人は、「市場が求める機能として本当にそこまで必要なのか」をあまり考えないし、それを捉えようとしない(捉えるのがヘタ?)。「良ければどこまででも良いほうが良い」と、せっせと突き詰める「こだわり」を否定せず、それを美学だと考える。
これにより、まさに「事物に固執し囚われる」ことで本当に必要でない(無駄な)ことに執着してしまう可能性が高いと言えそうだ。

台湾人は、一見怠け者と捉えてしまいそうだが、合理主義に基づいて個人で動く、つまり個人レベルで「良く思考する」ことが染み付いているため、この製品に本当に必要な機能・精度なのかを見極めるのがウマく、必要のないことに執着しない(つまり「こだわらない」)ことで効率的に合理的にものづくりをしているのだと思う。

しかも台湾は「品質を作り分ける」そうだ。市場が求めているものに合わせて品質を調整していると聞いた。スゴい...面倒くさそ〜で実は一番合理的な方法なんじゃないか...
お客さんだって必要な部分はしっかりできてて欲しいけど、余計なところがオーバースペックで余計にお金を払いたくなんかないよね。
日本は「良いモノ」しか作れない。お客さんの必要とするものに合わせ、コストを下げるために程よく手が抜かれた製品は作れない。いつも「良いモノ」を作る。今のお客さんはそれを望んでいない。
必要性の見極めベタと「こだわり」への思いからだ。

上記の思考から分かったのは、個人レベルで「なぜこれが必要なのか」を考えることこそ、ものづくりを進化させ、メーカーとユーザーお互いの最大の利益を引き出すのだ!ということ。
そして今(もっと前からか?笑)、台湾スタイルが旋風を巻き起こしている理由なのだとオレは思う。

個人的な思い
実際自分も仕事でものづくりに関わるなかで思うのは、今の日本人の考え方ではそう長くない先に先進諸国に追いつかれ、あっさりと抜き去られてしまうだろうということ。
現場には今の流れを感じずに、「最高のこだわりを!」「コストがかかっても最高のものづくりを!」と考えている人達は多い。思考が止まっている人達が多い。(偉そうに言っているが師匠に出会うまではオレも思考停止人間であった)

でも「こだわる」ということをオレは否定しない。なぜか?
「こだわり」はエネルギーになるからだ。どんなに時間を掛けてでも、その分の給料をもらえなくてもやりたい!と思える「情熱」となるからだ。

これまでの思考をつなげていけば、日本人は「こだわり」のエネルギーを
「情熱」に変化させる可能性を持っていると言える。

日本から海外へ、ものづくりの大移動がだいぶ進んでいる。
単純に考えれば日本では戦えないとか思ってしまう。
でも...

今世界で何が求められているか?当然それを捉えた上で、日本に生まれた
日本人としてどうものづくりに関わっていくか?生き残るために日本人のものづくりをどう進化させるか?
が重要だと、オレは強く思う。

答えはまだまだ見えないが、それを見つけるためにも日々全力で仕事をしていこう
と思う。(決意)


長くなりました。
読んでくれた方、ありがとうございます。
師匠にも感謝。

もし思うことがあればコメント頂けるとうれしいです。

では、また。



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